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都々に治癒の能力が発現したのは、齢九つの時だった。
嗜虐趣味をもつ父に虐げられ、母の鬱屈の捌け口にされ、ボロ雑巾の如く蔵の床に捨てられる毎日。
それは、冬の寒さがひときわ厳しい夜のこと。
「くそっ、あいつら、学も無いくせにこの俺に意見しやがって」
鳩尾に父の容赦ない蹴りが飛んだ。爪を噛んで苛立ちを隠さない秀一は相当腹を立てているようで、中身のない胃液を吐き出す都々には気付かない。
日に日に激化していく甚振りは、確実に都々の命を削っていた。
癒える前に傷は増え、どれだけ皮膚が腫れようが、血を流そうが、父と母には響かない。暴力を振るうことに対する感覚が麻痺してしまっているのだろう。そうして行き過ぎた「仕置き」が、幼い都々の少ない体力を奪っていく。
意識が朦朧としていた。満足に与えられない食事。無いに等しい防寒具。傷だらけの身体。ひどく眠くて、眠ってはいけないと脳内は警鐘を鳴らしていたのに、瞼は言うことを聞いてくれない。
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