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一つ確かなことと言えば、この力は都々にとって、救いでは無かった。
むしろ、死ぬに死ねない新たな枷となって、都々を縛り付けたのだ。
*
実に簡単な仕事だ。だから、鬱憤が溜まる。
「次の方」
先生のお陰で救われたと、しきりに頭を下げる患者を貼り付けた笑みで見送り、秀一は待合室に向かって声を投げた。
ふう、と一瞬だけ表情を削ぎ落し、苛立ちを吐息と共に逃がす。診察室の扉が開けられる音がして、秀一はまた人好きのする笑みを貼り付け――ようとして、失敗した。
「こんにちは」
凛と響く声は秀一のものではない。
すらりと高い背。真紅に煌めく双眸。視界を過る穢れなき白に、秀一の心はあっという間に奪われた。
「……私の顔に何かついているだろうか」
静かな声が、秀一に問う。耳の後ろで一つに括られた絹糸の如き純白の髪が、傾げた首に合わせて揺れた。
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