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都々は棚から包帯を取り出して、少年の腕に丁寧に巻き付けていく。最後に布を縦に引き裂いて結び留めると、秀一が少年に被せていた布を取り払った。
「さあ、終わったよ」
少年が幾度か瞬いて、寝台に横たわったまま、どこか呆然と天井を眺める。
それから、無垢な瞳が不思議そうに都々を見た。
「痛く、ない……」
秀一は少年から視線を外し、治療室の扉を開ける。すると、少年の父が慌てたように飛び込んできた。
「陣!」
「父さん」
「お父さん、治療は無事に終わりました。もう三日もすれば、ご子息の腕は綺麗に治るでしょう。ですが、三日はこのまま、決して包帯を外さないでくださいね」
「三日、ですか」
少年の身体をゆっくり抱き起しながら、少年の父が復唱する。
「ええ。塗布した薬が三日の間に浸透し、傷を癒しますから。塗りなおす必要はありませんので、そのまま」
淀みなく紡がれる説明が、真っ赤な嘘であることを都々だけが知っている。
しかしそれを伝える術も、気力も、理由も、都々は何一つ、持たなかった。
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