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その夜、ぼくはふしぎな夢を見た。
物音にさそわれて施設の外へ出たぼくは、犬のかぶり物をした人に連れられてカボチャの馬車に乗った。
馬車にゆられて行き着いた先は、お菓子の家だ。ぼくは大喜びでかべの板チョコをはがして、つまみ食いした。
家に入ると、仮面を着けた夫婦がおもてなししてくれた。
二人の温かなふんいきに、ぼくはふと両親を思い出していた。
おいしい料理のおかわりをもらったとき、うっかり「ありがとう、お母さん」と言ってしまったところ、夫人はあわててぼくの口を押さえた。
「ぼうや、だまっておいて。はくしゃく様に見逃してもらっているのだから」
夫人がそう言うので、ぼくは素直にうなずいた。
楽しいひと時はあっという間で、もうぼくが帰る時間になってしまったらしい。
仮面の夫婦に見送られ、ぼくは再びカボチャの馬車に乗った。
運転手はまた、あの犬頭の人だ。
よく見たら、昔、家で飼っていた犬に似ている気がした。
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