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「まずうちは、長女、二女、長男、三女の四人きょうだいで」
「お、お姉さんが二人も!?」
次々明かされる新事実に思考を追いつかせるだけで精一杯だった。
「そう。で、長男の俺が跡取りとして育てられたわけだけど、今は長女の梓美が婿を取って実質そこが跡取り候補……なんだよな? 南美」
「そう。苗字も〈小野寺〉で」
「それなら小野寺くんはもう跡取りじゃないってこと?」
私が訊ねると「そう簡単に済めばいいんだけどね」と苦い顔をする。
お酒の缶を傾けて中を覗いてからひっくり返して僅かに残る雫をすすった。
「父親は梓美を認めてない。婿を取ることも最後まで反対してたし、『継がせる気はない』って聞かないんだと」
「それは兼定を待ってるからでしょ?」
「いや。女だからだろ」
なんと……。そういう考えの方なんですね。
「バカみたいに堅い頭で。『パティシエ』って言葉さえ使えないんだ。『ヴァンドゥーズ』なんて言ったところで通じるわけない。そもそも結婚した女が働くことを良しとしてない」
そんな。それじゃ小野寺くんと考えが合うはずがない。
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