3 明かされる秘密

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「つーかあの(ジジイ)はまだ俺に跡取りやれとか言ってんの?」 「『まだ』じゃない。ずっと待ってたんだよ。時が解決するなんて考え甘いよ。わざと五年(はな)って、『もう満足しただろう』って言うつもりでいるんだから」 「俺のことなんてさっさと忘れてくれればいいのに」  言いながら忌々しげに例の封筒を睨んでいた。 「そんなことできるわけないでしょ。兼定はきょうだいで唯一の男だったんだから」 「好きでなったわけじゃない」 「それは誰でもそうだよ。運命を恨むしかない」  運命を恨む……。なんだろう。お金持ちでも、恵まれていても、全然幸せじゃないなんて。 「とにかくお父さんはもう動いてる。今回のお金のこともそうだし、大学にも願書送ったって聞いたよ」 「はあ? 勝手に?」 「そう。これからでも大学行かせて跡継ぎにするつもりなんだから」  ななな、なんてこと。大学に行くなんてことになれば当然パティシエは続けられない。 「春からなにか動きがありそうな感じはあったの。でも兼定が全然聞く耳持ってくれないから」 「おまえを無視してた結果がこれだって?」  言って例の封筒を指さす。そして私の方に視線を向けると、呆れたように言った。 「二百万だよ。頭おかしいでしょ」 「にっ」  予想を超えた金額に言葉を失い目を剥いた。
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