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1.
チリン、とかわいく鳴ったベルの音と共に、店の中に足を踏み入れる。
静かな店内に、優しいジャズの音楽が小さく流れていて、お客はまだ一人しかいない。
会う約束をしていた人との予定がなくなって、目の前にあったバーで飲んで帰ろうと思って入ったけど……。
店内は薄暗く、小さな照明とカウンターテーブルに置かれているキャンドルの暖かい灯りのみ。
だけどそのキャンドルの灯りが、店内を優しく照らして、居心地のいい雰囲気を醸し出している。
このお店の雰囲気、すごく好き、かも。
「こちらにどうぞ」
バーテンダーの男の人に声をかけられ、カウンター席のすでに座っている男の人の二つ隣の席に座った。
「初めまして、ですね?」
「はい。いつもこの辺には来ないんですけど、用があって来たら、たまたまみつけて」
「みつけてくださって嬉しいです。何、飲みますか?」
「じゃあ……、甘いやつ、で」
「かしこまりました」
あまりこういうバーに入ったことがなくて、ドリンクのことはよくわからない。
こんな頼み方でよかったのかと、ソワソワしていたら、それが恐らくバーテンダーさんにも伝わったのか、優しく微笑んでくれた。
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