1.

3/10
前へ
/27ページ
次へ
「名前は?」 「美羽(みう)、です」 「美羽ちゃん。へ〜、美羽ちゃん。可愛いね」 男の人は目を細めて笑うと、何が面白いのか私の名前を繰り返し呼んだ。 「俺はね、皓太(こうた)。よろしくね?」 「……はぁ、よろしく、お願いします」 「わあ、絶対よろしくしたくないって思ってるでしょ」 さらに目を細めてクスクスと一人で笑う、皓太さん。 「皓ちゃん、初めて来てくれた大切なお客様なんだから、ダル絡みするのやめて」 「え〜、いいじゃん。こんな夜くらいさ〜」 皓太さんはグラスを持ち、半分くらい入っていたグラスの中身を一気に流し込むと、ふぅ、と息を吐いた。 「俺ね、今日、親友の結婚式だったの。その親友に俺は片思い歴10年だったんだけどさ」 空になったグラスの中の氷を少しだけみつめて、コトンっと、グラスをテーブルに置いた。 「20年以上一緒の時間を過ごしてきて、いつ見ても綺麗な子だったんだけど、今日のドレス姿がまじで今まで見てきた姿の中で、いっちばん綺麗でさ、」 そこでまた一息つくと、皓太さんは私の隣の椅子に移動してきた。 「傷心中。だから美羽ちゃん、慰めてよ」
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!

77人が本棚に入れています
本棚に追加