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「名前は?」
「美羽、です」
「美羽ちゃん。へ〜、美羽ちゃん。可愛いね」
男の人は目を細めて笑うと、何が面白いのか私の名前を繰り返し呼んだ。
「俺はね、皓太。よろしくね?」
「……はぁ、よろしく、お願いします」
「わあ、絶対よろしくしたくないって思ってるでしょ」
さらに目を細めてクスクスと一人で笑う、皓太さん。
「皓ちゃん、初めて来てくれた大切なお客様なんだから、ダル絡みするのやめて」
「え〜、いいじゃん。こんな夜くらいさ〜」
皓太さんはグラスを持ち、半分くらい入っていたグラスの中身を一気に流し込むと、ふぅ、と息を吐いた。
「俺ね、今日、親友の結婚式だったの。その親友に俺は片思い歴10年だったんだけどさ」
空になったグラスの中の氷を少しだけみつめて、コトンっと、グラスをテーブルに置いた。
「20年以上一緒の時間を過ごしてきて、いつ見ても綺麗な子だったんだけど、今日のドレス姿がまじで今まで見てきた姿の中で、いっちばん綺麗でさ、」
そこでまた一息つくと、皓太さんは私の隣の椅子に移動してきた。
「傷心中。だから美羽ちゃん、慰めてよ」
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