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「だって、好きな子には意地悪したくなるじゃない」
私は前を向いたまま、言った。
彼はその言葉の意味を考えているようだった。
「その右手、どうするの?」
私は彼が固まってしまっているので、一押しした。
それを聞いた彼は、私の右手をぎゅっと握った。
「これが正解ってことですよね」
彼が私の耳元で、優しくささやいた。
「まあ、そうかな」
私はそう答えた。
そのとき、廊下を歩く足音が聞こえた。
守衛さんが見回りに来たようだ。
私達は慌てて廊下へ出て、研究室の扉に鍵をかけた。
「失礼します」
「さようなら」
私達は守衛さんに挨拶をして、そそくさと校舎を出た。
他の研究室の人たちもすでに帰ったようで、どの窓も灯りが消えていた。
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