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「これから、どうします?」
彼が言った。
「そうねえ、いつものラーメン屋でも寄ってく?」
私はいつもどおりに答えた。
「それじゃあ、いままでと変わらないじゃないですか。初デートですよ。なんかもっとこう、それっぽいこと、しましょうよ」
彼は文句ありげに言った。
「そう言われてもねえ…いつもと同じがいいと思うけど」
私はすたすたと歩き出した。
「えー?せっかくただの後輩から出世できたのに?」
彼は慌てて追いついてきて、私の隣に並んだ。
そもそも、もう3年近く前から、私にとって彼はただの後輩なんかではなかったのだけれど、彼はそれを知らない。
「何かしたいけど、何したらいいんやろ。せっかくやのに、何したらいいかわからへん」
彼は何やら1人で焦っている。
けれど、それは私も同じだ。
3年近くも、この3つ年下の後輩を想い続けてきて、きっとこのままの、先輩後輩の関係が続いて行くのだろうと思っていたのに、こんなに突然に、それも年末に駆け込みで、告白されるなんて思いもしなかったのだから。
すると、突然、彼がぴたりと立ち止まった。
私も止まって彼の方を見ると、彼がすっと手を差し出してきた。
「まず、最初にやりたかったことをすることにします」
私が戸惑っていると、彼は勝手に私の手をとり、しっかりと握って歩き出した。
やがて、いつものラーメン屋が見えてきた。
「寒いから、ラーメン食べましょうか」
彼が私を見た。
「うん。お腹もすいたしね」
私は頷いた。
私達は手を繋いで歩くことを楽しむために、すぐには着いてしまわないよう、ゆっくりと歩いていった。
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