告白は駆け込みで

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「じゃあ、鍵閉めお願いね」 教授が鍵を差し出しながら、そう言った。 「はい」 私は鍵を受け取った。 「良いお年を」 教授はそう言って、歩き出した。 「先生も良いお年をお迎えください」 私は教授の背中に言った。 年末の微生物学研究室。 大学は明日から5日間、年末年始休暇に入るので、研究室も今日が仕事納めだ。 と言っても、年内の大学の授業は1週間前には終わっているので、今、大学にはほとんど学生がいない。いるのは、私たちのような大学院生か卒業研究をしている4年生だ。その中でも、実家が遠かったり、旅行の予定があったりで早めに休みに入る人もいて、私のように年末ギリギリまで来ている人はかなり少なかった。 その上、明日から休みに入るということもあり、早めに片付けて帰る人がほとんどで、21時過ぎにまだ校舎に残っているのはほんの数人だ。 うちの研究室に残っているのも、私ともう1人、修士2年の篠原(しのはら)だけだ。 私は大学の近くに一人暮らしをしているので、遅くまで残って実験をしていることが多いが、彼も同じようで、大体、毎日、私が帰る時間まで残っている。 そろそろ帰る準備をしようかと、彼の方をちらっと見ると、彼も実験台を片付けているようだったので、私も片付けを始めた。
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