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また会いたい。
そう思っても、俺は指名されていなかったので、彼女の連絡先も知らない。
営業すらかけられない状態に少しはがゆさを覚えた。
3年になる夜職の中で初めての感情に戸惑いもあった。
そんな俺の気持ちとは関係なく店の営業は続く。
ナンバー2の俺には毎日そこそこの指名をいただく。
「奈留」
ナンバー1の真央さんが俺を呼ぶ。
「今日タワー建てといて、お前が一番センスあるから」
俺はシャンパンタワーを作るのがうまい。
そんなに大きいものはさすがに外注だけど、
小規模なものは内勤時代からよく頼まれる。
「今日は何ですか?」
「俺と姫が出会って1か月記念」
「へぇマメっすね」
「ほら、バリキャリのさ、友達と一緒に来てた子
イマドキ珍しいポニテの姫」
そう言われてハッとする。
彼女とその友達だ。
「一緒に来てた子はさぁ“男になんか興味ありません”とかさ、“ホストなんか金さえ払えばいいんでしょ?”みたいな感じだったよな」
「そうっすね」
「ま、俺の姫はかわいくて優しいけど」
真央さんはそう言って、『じゃ、頼むな』と奥に入っていった。
その背中を見ながら、俺の胸はざわめく。
彼女も来るだろうか—。
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