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「すごーい」
割と大きめに組まれたシャンパンタワーに、
例の姫、かなさんはご満悦だ。
「初めて見た。ね?」
そう言って同意を求めたその先には彼女—もえさん—がいた。
「そうね。素敵ね。飾りつけもかわいい」
もえさんはかなさんに微笑みかける。
きっと友達想いの人なんだろう。
「姫のタワーだよ」
そう言って肩を抱く真央さんに、かなさんは溶けてしまいそうだ。
そうは言ってもかなさんもわかっている。
この箱の中での恋人だということを。
それでも、素直に真央さんに甘えるのは、この時間を買っているからだろう。
「すごいかわいいタワー」
「これね、こいつが作ったの」
「へぇ、センスいいね。何くん?」
「えぇ知りたいの?」
「お礼は言わなくちゃ」
そんな律儀なかなさんに、真央さんはしぶしぶと言った感じで、
「うちのナンバー2だよ。奈留っていうの」
と答えた。
「初めまして、奈留です」
そう言って一応頭下げた。
「この前ついてくれたよね。すてきなタワーありがと」
「こいつさぁ、建てるのも注ぐのもうまいし得意なんだよ」
「へぇ」
「まぁシャンパンタワーだけじゃなくって、夜のベッドの中でも…ね」
「いや、余計なこと言わないでください」
「え?でも得意でしょ?」
かなさんに対するやきもちなのか、ちょっと意地悪に笑う真央さんが怖い。
「真央さんには負けますよ。」
俺もにやっと笑っておいた。
「はは、じゃ、さっそくコールもらって、乾杯しよう!」
俺はボトルを持ちながら、彼女—もえさん—を盗み見た。
さっきの下ネタが耳に入っていなかったように、
シャンパンタワーを目を細めて見つめていた。
俺が作ったタワーを見ている。
なんだか俺が見られているようで、
からだの芯が熱くなった。
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