4人が本棚に入れています
本棚に追加
気づかせてもらったこと
次の日学校に行った僕は、紫さんに言われた通り、勇気を出して気が合いそうな奴に話し掛けてみた。
すると彼は驚きつつも嬉しそうな様子で僕と会話をしてくれた。それ以来、そいつとは学校で行動を共にするようになった。
それがきっかけで対人関係に自信がついたのか、友人が他にもう一人でき、学校帰りにファミレスに行ったりカラオケに行ったりするようになった。僕はそれがすごく新鮮で、学校生活が楽しく思えるようになっていった。
あの夢は一回きりだと思っていたけれど、最初に紫さんが現れて二週間程経った頃、僕はまたあの夜空のような空間に居た。もしかしたらと思ったら、そこにはやはり紫さんが佇んでいて、振り返って僕を見ると笑顔を見せた。
「紫さんの助言通り、学校でクラスメイトに話し掛けてみたんだ。そしたら上手くいって、友達が二人出来たよ」
僕がそう報告すると、紫さんは、そう、と言って微笑んだ。
「良い友達が出来たみたいだね。なんだか君、前より顔つきが明るい」
「うん、紫さんに相談して良かった」
「それは何より」
そして紫さんは、そういえば、と言葉を続けた。
「君は高校生だよね?学年は?」
「学年?三年生だよ」
「大学に行くの?」
紫さんの問いに、僕は少し俯いた。
「うん、大学には行く。・・・けど、行きたい大学が、僕の成績で合格するか分からないんだ。今の成績のままだと、不合格になる可能性の方が高くて。だからもう少しランクを落とした大学にしようか迷ってる」
僕の話に耳を傾けていた彼女はうんうんと頷いた。
「塾に通ってみるとか?」
「それも考えたけど、うちあんまり裕福じゃないから、言い出しづらくて・・・」
顔を翳らせて言う僕の肩に紫さんは優しく手を置いた。
「とりあえず、親御さんに頼むだけでも頼んでみたら?裕福じゃなくても、大事な子供の学費は優先的に確保してるかもよ?やりたいことがあるなら、諦めない方がいいよ」
同じ年頃のはずなのに、紫さんの助言は説得力があり、悩む僕の気持ちを後押ししてくれた。
次の日早速親に塾へ通いたいと相談をすると、心配をよそに二つ返事で了承してくれた。
この時僕は、友人関係にしろ将来のことにしても、何も行動せずに悩んでいてばかりだったことに気が付いた。他の誰でもない、紫さんが気づかせてくれたのだ。
最初のコメントを投稿しよう!