気配

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 今日はハロウィーン。魔女に黒猫、蜘蛛と蝙蝠、カボチャにお化けが乱舞して、浮かれる僕らは注目の的。  でも、気配を感じるんだ。僕達を窺う存在の気配を。  十二時が来ると同時に十月は終わり。お菓子とイタズラにまみれた夢は消える。そうしたら、あの音が響きだすんだ。  シャンシャンシャンシャン…鳴り響くのはベルの音。僕らより遥かに強いその存在が、ここからは己こそが主役だと主張しだすあの音。  あれが聞こえたらすぐさま逃げろ。あの袋に飲み込まれてしまう前に。  光を浴び、その下で煌めきながら、僕らはみんな、逃げる機会を窺っている。  赤い服をまとったあの存在に捕まらないように。押し込められた袋の中で、数多あるプレゼントの一つに変えられてしまわないように。  夜が明けることさえ待たず…待てず、あのベルから逃れる術を模索する。 気配…完
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