アンデッド シスター

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けれど、目の前の惨状を目の当たりにしたらそんな簡単な話では無かったことをひしひしと感じた。 「どうしてこうなってしまったのか……。」 酷い傷を負った兵士達とこの教会を見ると、つい、そう思ってしまった。 覚悟が足りなかったのかとか、神に祈りが足りないのかとか、毎夜悩んでは落ち込んで泣いてしまう日もあった。 でも、だからと言って苦しんでいる人達を助けない選択肢は私達には無くて、父の言葉を思い出しながら今自分ができる事をただひたすらにするしかなかった。 毎日傷を負って苦しんでいる兵士達を見るのは心苦しかったし、汚れた包帯や衣服を取り換えても痛々しいそれらは簡単には治りはしなかった。 結局私達が私達の役割としてできるのはただ神に祈りを捧げることだけだった。 「主よ、どうか我らを、彼らを御守りください。」 日に日に重傷の人が運び込まれて、部屋にも全身にも消毒の匂いが染みついて、荒れる手を気にする余裕も無くなって、どうすれば少しでも傷を負った彼らを助けられるのか必死になって走り回る日々。 そうして、もう何人の人を見送ったか……。 元気になって出て行く人は少ない。多分、殆どの重傷者がこの教会に運ばれてる。 それはきっと命の灯が長くは持たないと判断されてしまったから。もう病院ではなす術が無くて、ここに流れてくる。
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