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先の戦争で私達シスターは負傷者達の治療の手伝い要員として借り出されていた。
元々養父である教会の牧師が兵士として借り出されて行った時から、いつかこうなる日が来るかもしれないとは思っていた。
養父は「何があっても、どんなに戦争が大きくなっても誰も責めてはいけないよ。」と言っていた。
彼が戦場に向かう前日、夕食の前に私達シスターを集めてきっとこれが最後になるだろうからと、父として牧師としての話をしてくれた。
「皆、同じように自分達の平和を守りたくて戦っているんだ。だから、助けを求める人がいれば手を差し伸べてあげなさい。それが味方でも敵でも関係ない。同じ生きている人間なのだから。」
「父としては皆に生きて欲しい。──だから容易に戦場に近付いては欲しくないし関わらないで欲しかった。けれど私がこうして戦いに行くということは遠回しに戦争に関わらせることになってしまった。……すまない。このまま何処か遠い戦争の無い国に逃げて欲しいという気持ちもある。でも、貴方達のことだからそれはしないだろうね。だから、父としてだけじゃなく牧師としての言葉も残しておくよ。」
「私は元々兵士だったから、命を奪ってしまった人達に対して懺悔するつもりで神職に就いて罪を償ってきたつもりだった。けれど、皮肉にもまたこうして戦場に向かうことになってしまった。血に汚れた牧師の元で育ったとはいえ、せめて貴方達は清くありなさい。人を殺めずとも人を守る事は出来るのだから。」
だから私達は戦ってくれている人達とは別の方法で人を守ることを決めた。
それがまさか教会が病院代わりに使われるとは思ってもいなかったけれど……。
受け入れる前は自分達に与えられた役目をしっかり果たそうと皆意気込んでいた。
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