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もうすぐ交差点があって信号が見えてきたところで、僕は突然麻緒に背中を突き飛ばされた。
僕はふらふらとよろめきながら前に数歩進んでつまづいて、前のめりに転んでしまった。
するとその直後に、何かがぶつかったような大きな破裂音が聞こえてきた。
僕は慌てて立ち上がって後ろを振り返ると、車が歩道に乗り上げて壁にぶつかっていて、車の手前に麻緒が倒れていた。
僕は麻緒に駆け寄って麻緒の体を揺すりながら、
「麻緒、麻緒…」
と声をかけたけれど、麻緒はぐったりとしたままで、頭から血を流していた。
僕は鞄からスマートフォンを取り出して救急を呼んでからも麻緒に声をかけ続けていた。
どのくらい待ったのか分からないけれど、パトカーと救急車が到着すると救急隊員に事情を話して僕は麻緒と一緒に救急車に乗り込んだ。
救急車は市立病院に到着して、麻緒は集中治療室に運び込まれて、僕は集中治療室前の廊下の長椅子に座って待つことになった。
待っている間に落ち着きを取り戻した僕は、麻緒の両親に連絡を取ろうと思って、スマートフォンから麻緒の自宅に電話を入れた。
電話口には麻緒のお母さんが出て、麻緒が交通事故に遭って救急車で市立病院に運び込まれたことを伝えた。
麻緒と僕の自宅は隣の市にあるため、1時間程すると麻緒のお父さんとお母さんが到着した。
僕は麻緒のお父さんとお母さんに交通事故の状況を正直に話した。
「麻緒は僕をかばってくれたのだと思います。」
僕が話をすると麻緒のお父さんが、
「気にしなくていいよ!
涼玖君は、何も悪くないよ!」
と慰めの言葉をかけてくれた。
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