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麻緒を失ってから僕はなかなか受験勉強に集中できなかったけれど、何とか東京の大学に合格して上京した。
東京都内の学生用の賃貸アパートに住んでいる僕は、心の底から大学生活を楽しむことはできなかった。
僕にとって麻緒の存在は大きくて、今でも時々交通事故の時の夢を見ることがある。
麻緒の命日が近づいてきた9月の金曜日、僕は大学の講義を終えて自宅に帰り、パソコンでインターネットを徘徊していた。
そんな時、僕はある不思議なホームページを見つけて、ついそのページに見入ってしまった。
そのページは『天使の館』という名前のページで、天国に旅立った大切な人と再会することができると書かれていた。
そこには、生前悪事を働いて地獄に行った人とは再会できないと書かれていた。
『天使の館』は、東京都内の日暮里にある建物のようで、住所は書かれていたけれど電話番号は書かれていなかったため、僕はそこに行ってみようと考えた。
翌日は土曜日で大学の講義が休みのため、僕は朝起きて朝食を済ませてからアパートを出た。
自宅の最寄り駅から電車に乗って日暮里駅で下車して、スマートフォンのマップアプリを使って『天使の館』を検索して位置情報に従って歩いた。
『天使の館』は、歩いて20分程のビル街の外れにあって、古びた木造の建物だった。
玄関は引き戸になっていて僕は、
「こんにちは!」
と言って引き戸を開けて思い切って中に入った。
すると建物の奥の方から、
「いらっしゃいませ!」
と言って、白髪の老紳士が現れた。
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