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「お呼びでしょうか、我が創造主様」
「うん、呼んだ。ちょっと頼みがあってね」
「何なりとお申し付けくださいませ」
「相変わらずルーカは真面目だねぇ。少しぐらい息を抜くとかした方がいいよ? 心の柔軟性は、頭の柔軟性に直結するからね」
「我が創造主様のお言葉とあれば、そのように努力いたします」
我が創造主様と呼ばれたその男は、人間たちから『GOD』と崇め奉られている存在だ。
肩甲骨の辺りまで伸ばした髪は、少し癖のあるダークブロンドで、白い布を肩から纏い、足元まで隠している。
しかしこれは世を忍ぶ仮の姿で、本当は実態などない。
雲や霞では人間たちに分かり難いので、親切心から人間の想像に寄せているのだ。
「頼みというのは他でもないんだ。この前お使いに出した天使が二人戻ってこないのは知っているだろう? どうやら人間の毒にやられちゃったみたいでね。残念だけれど堕天使になり下がっちゃったみたいなんだ」
「嘆かわしいことでございます」
「うん、まあいろいろ事情はあったのかもだけど、このままじゃ拙いでしょ? だからルーカに迎えに行ってもらいたいんだよね」
「連れ戻るだけでよろしいのでしょうか?」
「うん、帰ってきたら再教育機関に入れちゃうから、連れてきてくれるだけでいいよ」
ルーカは少しだけ考えてから言葉を紡いだ。
「万が一抵抗するような事態となれば、いかがいたしましょうや」
「抵抗かぁ……有り得るよね。まあその時はルーカの判断に任せるよ。良きようにしなさい」
ルーカが跪いたまま深く頭を下げた。
「我が創造主様のご期待に添えるよう、命を賭して使命を全う致します」
「うん、まあそれほど気負わず無くても大丈夫だから。とりあえず頑張ってね」
創造主の前を辞したルーカは、神殿を出てゆっくりと歩き出した。
この天界において、かつて人間だった者は意外と多い。
その中でもルーカが特に信頼しているのは『エデン動物公園』の園長であるノアだ。
「人間界に長期滞在することになるとしたら、人間の風習や生活上のルールなども知っておい
た方が良いに違いない」
そう考えたルーカはノアの好きな星屑キャンディを手土産に、雲の絨毯の上を飛んだ。
「おお! 久しぶりだねぇ、ルーカ。元気だったかい?」
ライオンのたてがみを梳かしてやりながら、にこやかにルーカを出迎えるノア。
「うん、久しぶり。実はちょっと相談があって来たんだ」
頷いたノアは管理事務所のソファーへとルーカを誘った。
「何事かね?」
「うん、実は我が創造主様から特別な使命をいただいたんだ。今度はちょっと長期になりそうでね、人間界でのルールとかも知っておいた方が良いと思ってさ。ああ、これはノアの好きなキャンディだ。良かったら食べてよ」
「ほうほう! これはありがたい。それで? 人間界のルールと言ったかの? いったい何をしに行くんじゃ?」
「我が創造主様のご意志に背いた者たちを連れ戻すために行くんだよ。堕天使となったとはいえ、仲間だった者たちだから辛い仕事ではあるけれどね。これも思し召しというものさ」
「そうか、それはなかなかに大変な仕事じゃな。まあ、そのようなお役目ならルーカは適任じゃろうて。さすが創造主様じゃ。良く見ておられる」
「適任か……僕はどうやら堅物すぎて敬遠されているみたいだから。まあだからこそ同じ轍は踏まないと思っていただけたんだろうね」
「そうかもしれんな。しかし私はルーカのその一途さは好ましいと思うぞ? 鉄のように強い意志がないと、なかなか信念など貫けるものでは無いからのう」
「はっきり融通が利かないって言ってくれても良いんだよ? まあ、そういうことだから助言をお願いしたいんだ」
少しだけ寂しそうに笑ったルーカの顔を見て、ノアが優しい笑みを浮かべた。
「そうじゃなぁ……人間界で動くなら男より女の方が良いかもしれん」
「そうなの? 聞いてよかったよ。私は男で行こうと思ってたから」
「女のほうが動きやすいんじゃ。多少の不便はあるが、か弱い振りをして涙を浮かべれば、大概のことは何とかなる。男は意味のない責任や上下関係に縛られて雁字搦めじゃからのう」
ノアはひとつずつ丁寧に『人間界で生きるコツ』を伝授していった。
そもそも天使に性別はない。
男でも女でも、犬でも猫でも鳥でもなろうと思えばなれるのだ。
それは創造主と同じで、本来は実体のない存在だからなのだが、便宜上『人間が考えた天使』の姿を常態としていた。
金髪のくるくる巻き毛で、小さくて純白の羽を持ち、編み上げたギリシャ風サンダルと、膝上までしかない白い布を体に巻きつけている。
「では行ってくるね。戻ったら人間界の銘菓でも持ってくるよ」
見送るノアに手を振って、ルーカは創造主の使命を全うするために地上に降り立った。
「さあ、どこから探そうか」
天界から見ると芥子粒のような人間界も、人型となった今となっては果てしなく広い。
人間に紛れ込んだ堕天使を見つけるなど、砂漠で貝殻を探し出すより難しいかもしれないが、総務部から『反逆者追跡サーチ』なるものを借り受けているので問題は無い。
若い女性の旅姿を模したルーカは、街はずれの廃屋で人事管理部から預かったメモを見た。
それは、前回のミッションで帰ってこなかった二人に関する情報が記載されているものだ。
「へぇ……二人とも私より先輩じゃないか。一人はアルマか……あの方は正義感が人一倍強い天使だと思っていたのに。もう一人はセント? セントってあのセントか? まさかなぁ」
アルマと呼ばれるその天使は、悪魔との戦争時に先頭に立って戦った天界の英雄だ。
その戦争は千年続き、何とか創造主軍が勝ったものの、無数の天使たちが光の粒となって消え去った。
もちろんルーカも参戦している。
もう一人のセントは軍師として素晴らしい功績を持つルーカの憧れだ。
「いったいどうしちゃったんだ? 二人とも」
メモを見ながら思い悩んでいると、壊れかけたドアの向こうで声がした。
「誰かいるのかい?」
老婆の声だ。
「はい。旅のものでございます。ここで夜露を凌ごうとしておりまた」
「あれまぁ、若い女の声だよ。火もおこさないでは寒かろうに。良かったら一緒に来るかい?」
「いえ、ご迷惑をおかけするわけには参りません。ここに留まることをお目こぼしいただけるだけで十分でございます」
ギギッという音がしてドアが開いた。
「そんなこと言わずについてきなさい。ここらは夜になると物騒なんだ。若い娘などひとたまりもないさ。悪いことは言わないからついておいで」
どれほど凶暴だろうが天使にとって人間など、蟻を踏みつぶす程度の力で十分だったが、あまり事を荒立てても拙いと思ったルーカは、老婆の言葉に従うことにした。
「ご親切にありがとうございます。それではお言葉に甘えます」
ルーカは小さな鞄を持って立ち上がった。
「さあさあ、こっちだよ」
老婆に案内された家は、小屋と呼ぶにふさわしいほどのボロ屋だった。
入ってすぐに小さなテーブルがあり、その奥には藁がはみ出したベッドらしきものが置かれている。
ソファーはなく、少し傾いた木の椅子が二脚あるだけだ。
「あの……おばあさん? 泊めていただけると言われましたよね?」
老婆は歯の抜けた口をニマッと開いた。
「ああ、泊めてやると言ったよ。でも私の家に泊めるなんて一言も言ってないだろう? もうすぐ迎えが来るよ。こんなボロ屋よりずっと立派なベッドに案内してくれるだろうさ。これで私の借金も帳消しってわけさ」
ルーカは老婆の脳内を透視した。
どうやら今からやってくるのは破落戸で、連れて行かれる先は娼館のようだ。
「なるほど……でも私にはとても大切な役目があるので、おばあさんの思うようになるわけにはいかないのです。申し訳ないけれど、今から来る人には上手く言っておいてくださいな」
そう言うが早いか、ルーカは外に飛び出した。
遠くで小さな灯りが揺れている。
どうやらお迎えが来たようだ。
慌てて出てきた老婆に優しい声で言った。
「人間なんてどうせ死ぬんです。生きているうちに徳を積まないと死んでから苦労しますよ」
老婆が苦々しい顔で言い返す。
「何が徳だよ! バカバカしい。生きているうちに良い目を見なきゃ死にきれないってもんだよ!」
「そういうことなら、私からいうことはもう無いです。ちなみにあなたは今夜死にます。あなたが呼んだあの男たちに縊り殺されるんです」
老婆の目が見開いた。
「なんだって? お前が逃げなけりゃ殺されたりするもんか」
「そうは言っても私には役目があると言ったでしょう? 私にとってそのお役目以外は関係ない話です。あなたが死のうが、それこそ何の興味もありません」
「お前……年寄りを殺そうってのかい? 悪魔のような女だね」
「いえいえ、悪魔なんてとんでもないですよ。私は天使なんです。我が創造主の声を伝えるのだけが私の使命なんですよ。それ以外はゴミなのです」
小さく揺れていた灯りが徐々に近づいてきた。
「まあせいぜい自分で頑張ってみてください。そのまま放置されたあなたの骸の上には、やがて草が生い茂ることでしょう。虫や動物の助けになりますよ。それが回帰というものです。回帰こそ我が創造主のお言葉に従うことなのですから、心からありがたく思いなさい」
老婆はハクハクと口を動かしたが、ルーカにはそれにつきあう筋合いは無い。
「では、さようなら。あと数分ですがお元気で」
ルーカの予言通り、その数分後には老婆の断末魔が林の中に響き渡った。
「無駄な時間だったが、まあこれも創造主様の思し召しでしょうね」
そう言うと、ルーカはワンピースのポケットから金色の羅針盤を取り出した。
「間違いなくこっちの方角ですね」
その羅針盤は庶務部からの借り物で、今回の目標であるアルマとセントの気配を探査するためのものだ。
光の筋が二人の居場所を差し示す。
「どうやら別々に行動しているみたいですねぇ」
羅針盤が放つ光の筋は二つあり、全く別の方角を指していた。
「強い光の方が近いってことだったから、一人ずつ説得するしかないでしょうか」
ルーカはワンピースについてしまった落ち葉を払い、ゆっくりと歩き出した。
そして二時間ほど歩き、深夜の宿場町に辿り着いたルーカは、唯一灯りが漏れている建物に近づいた。
「ここは娼館ですね? なるほど不夜城ということですか」
窓から覗くと、酒に酔った男に暴力を振るわれながら犯されている女の泣き顔が目に飛び込んだ。
「あれまあ、可哀そうなことをするものだ。まああれがあの女性の仕事ということだろうから、邪魔はしてはいけないね」
顔を腫らし、唇から血を滴らせた女と目が合った。
「助けて! 助けてください!」
眉を寄せて悲しげな顔をしてみせたルーカだったが、この女性を助けるというミッションは与えられていないと判断し、足早に窓を離れた。
またしばらく行くと、道端で衣服をはぎ取られたまま傷だらけで転がっている男がいたが、関わる筋合いはないとばかりに見ない振りで通り過ぎる。
「そろそろですね……ん? ここですか」
羅針盤がさし示す先に浮かび上がったのは、廃屋と見まがうような教会だった。
人間界に降り立って初めて微笑んだルーカは、迷うことなく聖堂の扉を開ける。
「ごめんくださいませ。ここに天使だった者はいませんか?」
とは言ってもすでに深夜だ。
返事などあるはずもない。
「仕方ないですね。明日の朝まで待ちましょうか」
ルーカは壊れかけた長椅子に体を横たえた。
そして翌朝、体を乱暴に揺すられ目を覚ます。
「ルーカじゃないか。ああ、やっぱりそうだ。俺だよ俺、セントだ」
「セントさん? 随分草臥れてますが、確かにセントさんですね。会えてよかったです。お迎えに来たのですよ。さあ、帰りましょう」
いきなりセントと名乗った男の腕を引っ張ったルーカ。
その手にしがみついたのは数人の小さな子供達だった。
「セントを連れて行かないで! セントがいなくなっちゃいやだ!」
さすがに子供の手を振り解くことは憚られ、困った顔でセントを見るルーカ。
「帰れって? 創造主様のご意向かい? まあ、いずれはそうなると思っていたけれど、まだ帰れないんだ。まだ戦争は終わってない。ここに居るのは戦争孤児たちだよ。今俺がいなくなると、この子たちが飢え死にしてしまう」
「困りましたね……私の使命はセントさんとアルマさんを連れ戻すことなのですよ。一緒来てくれないと、私のミッションが達成できません」
「なるほどな。確かに神からの使命は、俺たち天使にとっては絶対的なものだ。しかしなぁ、その使命を達成するために発生する犠牲ってものを考えたことがあるか?」
「そんなものは大事の前の小事というもの。創造主様の言葉以上に大切だとは思えません」
「おお! さすがは天使学園文官部門主席卒業のルーカ殿だ。しかし、俺はまだ帰れんよ。無理やり連れ帰るというのなら、我が剣技をとくとご覧いただくことになるぜ?」
軍師とはいえ、軍神アルマと双璧を成したほどの強さを誇るセントだ。
どう考えても秒で光の粒に還ることになるのは火を見るより明らかだった。
「そう言えばアルマさんはどちらですか?」
「アルマは今前線で戦っているよ。俺たちが創造主様から受けた使命は『東西の戦争を終結させよ』というものだった。まだ戦争は終わってないんだ。だからまだ帰れないんだよ」
ルーカは怪訝な顔をした。
「しかし創造主様はお二人を連れ帰るようにと仰いました。ミッションコンプリートと判断されたということでしょう? なのになぜまだ終わってないなどと?」
「終わってないというのが現実だからさ。確かに東西戦争は紙上では終わっている。でも終わってないんだよ。小競合いは頻発しているし、民間人の犠牲も後を絶たない。これで終わったと言えるか?」
「それは……」
「いいか? 頭でっかちなルーカ君。神はなぜ人間界をお作りになった? 最終学年で習っただろ?」
「ええ、習いましたよ。神の無限の愛を人間たちに与え、交流を持ち、更に深い愛を与えることで、人間の成長と調和を望まれたのです」
「その通りだ。で? 現実はどうだ?」
「……神の愛は浸透せず、愚かな人間たちは戦争を繰り返しています。成長することを放棄し、調和とは程遠い社会にしかなっていません」
「そうだ。そこで神は、具体的な指示をお出しになるようになった。ある程度は人間に任せておられるが、どうしようも無くなる直前には、俺たち天使をお遣いになり軌道修正を図っておられるんだ。しかし天使は神のメッセンジャーではない。神の戦士なんだ。それを忘れてはダメだぞ」
「確かにそうですね」
「行ってこいと言われて行くだけじゃ、子供の使いと同じだろ? なぜこの指示が下されたのかの本質を見抜き、最終的には神のご意志に沿う社会を実現する。これが本当の天使の役割というものだ」
ルーカは目から鱗が落ちるような思いだった。
「セントさん……私に与えられたミッションは……なぜ我が創造主は私を……」
「お前さぁ、そのミッションを与えられた時なんて言われたんだ? 焦るなとか、気を抜けとか言われなかった?」
「言われました」
「それを踏まえて、我らが創造主の真の狙いは何だと思う?」
「それは……」
暫しの沈黙が流れる。
子供たちは難し過ぎる会話に飽きて、勝手に遊び始めていた。
「まだ難しいかな? ホントお前って杓子定規って言うか、言葉の表面しか見ないよなぁ。それじゃあ成績は良いだろうが、現場では使えんぜ? お前のミッションはおれとアルマを連れて帰ることだよな? では俺たちが帰るためには何が必要だ?」
「お二人のミッション完成です」
「その通りだ。そうしなければお前の使命は達成できない。となると? お前がしなくちゃいけないことは?」
「お二人の使命が一日でも早く完了することを手伝うことでしょうか?」
「正解だ。だから神は焦るなと仰ったんだ」
「なるほど……」
ニヤッと笑ったセントが、ルーカの肩をポンと叩いた。
「では、ここは任せるよ。戦争で親を亡くした子供っていうのはな、心の底に恨みを抱えているものだ。大人になると、その恨みを晴らそうとするだろ? それが戦争の火種なんだよ。この根幹を絶やさないい限り、俺とアルマのミッションは完成しない」
「はい」
「理解してくれたなら何よりだ。では、俺は新たな不幸の火種を絶やすために出かけてくる。お前はここで孤児たちを育てていてくれ。彼らが心から幸福だと思えるように、長じても復讐などと夢にも思わないように、素直で優しい子に育てるんだぞ?」
「えっと……セントさんはどちらに?」
セントがウィンクをした。
「ちょっとかわいそうな女たちを導いてくるよ。彼女たちも戦争の犠牲者だからな」
「そうですか。ご苦労様です。一日でも早いミッション達成のために、お互い頑張りましょう」
「ああ、頑張ろう。それと、もしかするとおっかない男たちが来るかもしれないから、適当に言い逃れしておいてくれ。それからその姿は止めておいた方がいいぜ? 女より男の方が融通が利くから。襲われでもしたら面倒だろ?」
「そうなのですか? ノアさんから女の姿の方が生きやすいと教えてもらったのですが」
「ノアさんか。彼の情報はちと古いからな。その棚に牧師の服があるから、それを着ておけ。それとひとつ忠告だ。お前が人間たちに天使と呼ばれたいなら、あまり深く考えず、はいはいと愛想よく願いを叶えてやれ。それが人間の考える天使なんだ。天使のような人だと言われないとなかなかことは上手く進まんぞ」
その時、教会のドアが開き数人の女たちが顔を覗かせた。
「まだなの? セント。待ちくたびれちゃったわ」
「ごめんごめん。後輩が訪ねてきてね、仕事の引継ぎをしていたんだ。さあ、行こうか? 今日は誰から天国に行かせてほしいんだ?」
女たちが下卑た笑みを浮かべ、自分が先だと小競合いを始める。
ルーカは小さく呟いた。
「さすがセント先輩だ。あの女たちを天国に導く仕事をなさっているんだな。これも神の言葉を伝えるための手段なのだろう。僕も見習わないと」
牧師の衣装に着替えたルーカを子供たちが囲んだ。
「お腹が空いたぁ~」
「ああ、それは大変です。今日の糧をいただきましょうね。それを与えて下る神に感謝し、貧しくとも誰も恨んではなりませんよ」
「そんなことどうでも良いから早くぅぅ!」
女たちに纏わりつかれながら、セントはルーカを振り返った。
「まあ精々がんばれよ。アルマも今頃楽しんでいることだろうぜ。酒池肉林の最前線でな」
それから数百年、創造主はひとりの天使を呼び出した。
「ああ、忙しいのに悪いねえ。実は人間界に迎えに行って欲しい者たちがいるんだ。名前はアルマとセント、そしてルーカというんだがね」
神の意思を受け取ったその若い天使は、使命感に燃えて人間界への扉の前に立った。
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