1.“相川くん”との遭遇

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「今日、文化祭だよね。ここで何してんの?」 「私は仕事を終えましたので、こちらで制作をしています」 「仕事……?絵描いてるってことはもしかして、校門にあったあのでっかい看板描いたの!?すげーじゃん」 「よく分かりましたね、ありがとうございます……」  さらに距離を縮めて後ろから顔をのぞき込まれた。  見慣れない笑顔と爽やかな香りに心臓が高鳴る。人懐っこい人だけど、調子を狂わされて変な感じ。 「ねえねえ、名前は?」 「……滝本稀子(たきもと きこ)と申します」 「キコちゃん……可愛い名前」  私に興味を持った彼は笑顔で名前を聞いてきた。  可愛い名前、なんて異性には初めて言われた。なんて照れちゃダメ、これはただの社交辞令だから。 「俺は相川刹那(あいかわ せつな)。ここで出会ったのも何かの縁と思うから、よろしく」  だけどいい笑顔で手を差し出してきたものだから、社交辞令とは思えなくてちょっぴり嬉しい。握手すると、相川さんはまた笑顔を弾けさせた。 「よろしくお願いします、相川さん」 「そんな堅苦しい呼び方じゃなくていいよ。相川くんでも、刹那でも」 「……セツナって珍しい名前ですね」 「でしょ、珍しいから覚えやすいよね。刹那って呼ぶ?」 「いえ、なんだか恐れ多いので相川くんにします」 「なんでだよ、まあどっちでもいいけど。じゃあ俺はきいちゃんって呼んでいい?」  うーん、その呼び名は私にしては可愛すぎるというか、少し抵抗がある。でも、どうせ今日限りの関係なのでいいでしょう。 「キコちゃんって呼びにくいからきいちゃんでもいい?」 「どうぞご自由に」 「分かった、よろしくきいちゃん」  それにしても、さっき会ったとは思えないくらい距離を縮めるのが上手い人。女子に追われていたみたいだし、もしかして相川くん芸能人だったりして。
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