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「今日、文化祭だよね。ここで何してんの?」
「私は仕事を終えましたので、こちらで制作をしています」
「仕事……?絵描いてるってことはもしかして、校門にあったあのでっかい看板描いたの!?すげーじゃん」
「よく分かりましたね、ありがとうございます……」
さらに距離を縮めて後ろから顔をのぞき込まれた。
見慣れない笑顔と爽やかな香りに心臓が高鳴る。人懐っこい人だけど、調子を狂わされて変な感じ。
「ねえねえ、名前は?」
「……滝本稀子と申します」
「キコちゃん……可愛い名前」
私に興味を持った彼は笑顔で名前を聞いてきた。
可愛い名前、なんて異性には初めて言われた。なんて照れちゃダメ、これはただの社交辞令だから。
「俺は相川刹那。ここで出会ったのも何かの縁と思うから、よろしく」
だけどいい笑顔で手を差し出してきたものだから、社交辞令とは思えなくてちょっぴり嬉しい。握手すると、相川さんはまた笑顔を弾けさせた。
「よろしくお願いします、相川さん」
「そんな堅苦しい呼び方じゃなくていいよ。相川くんでも、刹那でも」
「……セツナって珍しい名前ですね」
「でしょ、珍しいから覚えやすいよね。刹那って呼ぶ?」
「いえ、なんだか恐れ多いので相川くんにします」
「なんでだよ、まあどっちでもいいけど。じゃあ俺はきいちゃんって呼んでいい?」
うーん、その呼び名は私にしては可愛すぎるというか、少し抵抗がある。でも、どうせ今日限りの関係なのでいいでしょう。
「キコちゃんって呼びにくいからきいちゃんでもいい?」
「どうぞご自由に」
「分かった、よろしくきいちゃん」
それにしても、さっき会ったとは思えないくらい距離を縮めるのが上手い人。女子に追われていたみたいだし、もしかして相川くん芸能人だったりして。
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