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薄ぼんやりした明かりの中、首を巡らせて部屋の中を見ると、古い学生向けアパートに住んでいた大学時代を思い出した。
もっとも、あの頃の自分の部屋よりもずっとキレイで、よく整頓されているように見える。
自分が一人暮らしをしていた頃は、床のあちこちに本や資料の髪を広げていたものだった。
「あー……」
一度天を仰ぎ、俯いて首を横に振る。
実は安芸文は同性愛者であり、このことは極一部の知人しかしらない。
それなのに、職場の後輩でチャラ男と呼ばれる夏海に、酔っているとはいえ襲われそうになるなど、不覚の一言だ。
けれど、何よりも動揺したのは、夏海が元カレと同じ言葉を言ったことだった。
“いいにおいがする ”
記憶に残る言葉と、脊髄に走る感覚。
無理やりかさぶたを剥がされたのは、ちょっと許せないな。
安芸文は、気持ちよさそうに眠っている夏海の顔を覗き込んで表情を消した。
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