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我が家の子になってくれて、十五年と一ヶ月。
リードを引いて一緒に歩くたびに、足を悪くしてからは抱っこして、あるいは抱っこ紐に入れて歩くたびに、よその家の子よりも頻繁に街行く人々の目を惹いたものです。車を運転して行く人々の目さえも。
――わぁ、すごく可愛いワンちゃん!
と声に出されるのは勿論、視線を向けられるたびに、目で追われるたびに、お父さんである私は、嬉しくて嬉しくて、優越感にも浸れました。
天使のように可愛いワンちゃんが息子として、紛れもなく家族の一員として、間近にいることが当たり前に思えた幸せ。その確たる幸せに溺れ、私はある意味自惚れてもいました。
――シー君は天使ちゃんだね。
――うん、本当に天使ちゃんだよね。だったよね、か……。でも、まだ、今は天使ちゃんのまま、こうして家にいてくれるし。明日の夕方に、火葬されるまでは。
お母さんとお姉ちゃんである妻と娘が、四日間の入院の後に動物病院から帰って来たシー君の遺体を順に抱っこしながら、愛おし気に語り合っていました。私は、距離感が合わず焦点の定まらない目から、涙を流すばかり……。
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