04.研修

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その後、トイレから戻ってきた、真野。 「ねえ、ちょっと!」 何か言いたげだったけど、すぐその後に、雛乃さんが入って来た。 黙って、席につく真野。 雛乃さんが、話し出す。 「すみません、皆さん。お待たせしました。 この後の予定ですが…… 副社長の商談が無事成功し、この後、本店に戻って来られます。 午後もまた別件の商談があり、外出されてしまうのですが、ランチの一時間だけ、時間があるそうです。 本来であれば、この後は自由昼食となっていますが、もし皆さんさえよろしければ、副社長とランチミーティングは、いかがですか? プリンシパルのランゴリーノのランチを、副社長が今日のお詫びに、ご馳走してくださるそうです」 「きゃーーーー!」が、聞こえない。 絶対ここでそう叫ぶはずの真野が、黙ってじっと雛乃さんを見つめている。 なんだ? ランゴリーノくらい、俺だって知ってる。 知ってるだけで、行ったことはないが。 真野が、きゃーーーー!と絶対叫ぶ店だということは、わかる。 かわりに、他のやつらが、やったぁ!なんて言ってる。 「皆さん、参加いただけるということでよろしいですか?」 皆、頷く。 よかった、と呟く雛乃さん。 「────雛乃さんは」 いきなり、真野。 「雛乃さんは、行かないんですか?」 「はい、私はこの後カフェのシフトに入るので、行きません。 午後は、自主学習になっていると思います。 レポートをまとめたり、社内を自由に見学いただいて結構です。 ただ、こちらももしよろしければ、食後のコーヒーを飲みに、ハレクラニに来てみませんか? 是非、お待ちしています」 にこっ、と、微笑む。 「そろそろ副社長もプリンシパルに到着すると思います。ホテルの一階、エントランス集合でお願いします。 ……今日は、ありがとうございました。 この後の研修も、引き続き頑張ってくださいね」 慌てて俺たちも、ありがとうございました!とお辞儀をして、にこっと笑った彼女は、部屋を出て行った。 ••• プリンシパルに向かいながら、真野が教えてくれた内容に、俺たちはまた驚かされた。 真野がトイレから出て来ると、ちょうど廊下の端で雛乃さんが、副社長らしき人物と電話で話していて。 あの5人はどうか?的なことを聞かれてる、と咄嗟に嗅ぎ取った真野は、身を隠して聞き耳を立てたらしい。 俺の態度のこともチクるんじゃないか?と、少し警戒もしたとか。 だけど雛乃さんは、そんなこと一切話さず。 皆優秀な人材だ、と。 頭が良く、拙い(そんなことは決してないのだが)自分の話を即座に理解してくれた、と。 しかも一人一人を細かく分析していて、それがまた的確だったらしい。 あんた達のことはなんて言ってたか覚えてないけど、と前置きし、 真野は、女性一人選ばれたことだけはある逸材。有能であることは言うまでもないが、相当の努力もして来ている。 今後彼女が希望する部署に、絶対配属してあげて欲しい。 彼女を潰さないでほしい。 あの子は、AOIになくてはならない社員になる、と。 そう、言ってもらえた、と。 真野は、涙ぐんだ。 「ランゴリーノの予約もね、雛乃さんのお陰なの。雛乃さん、得意先の専務さんからランゴリーノのランチチケット、もらっていたんだって。優先的に予約が取れるチケットらしいんだけどね?」 胸が、熱くなる。 「ランチの後。ハレクラニで、食後のコーヒーな。レポートも、そこで皆でまとめるか?」 俺の提案に、全員が賛同した。 ◇香山翔吾side fin
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