Prologue

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私、雛乃未結(ひなのみゆ)23歳。 今巷で話題のIT企業、AOIコーポレーションの本店ビル受付嬢。 新卒社員採用で、今年で2年目になる。 兼、今年3月にオープンした、本店ビル併設のカフェ「Halekulani(ハレクラニ)」のバリスタ。 受付嬢のシフトが週のうち3分の2、残り3分の1がカフェ勤務。 「Halekulani」は、AOIコーポレーションが手掛ける、カフェ事業の先駆け。 一号店をここ本店にオープンさせ、私も店員(バリスタ)の一員に抜擢された。 「君のそのコミュニケーション能力を駆使して、社に貢献して欲しい」 その配属を告げたのは凄腕の本部長、葵 一哉(あおいいちや)28歳。 「Halekulani」は、彼が今最も力を入れている事業のひとつだ。 葵本部長は人事も一任されていて、私のように二役、はたまた三役を抱えている社員は数名いる。 まぁ私の二役なんてのは下っ端の仕事で、全然たいしたものではないけれど。 特殊な人事の一環として、期間限定で社外の人間が呼ばれることもある。 プロジェクトを仕切らせたり、社内研修の講師として呼んでくるなんてことは日時茶飯事。 とにかく自社だけでこじんまりとせず、色々な分野から多種多様に取り入れて、風通しを良くし、社を発展させて行きたいという葵本部長の理念があるらしい。 これは、意見交換会のパーティで本部長本人から直接聞いた話。 本部長は、その高みからではなく、私のような下っ端の人間と同じ位置にまで降りて来て、気さくに腹を割って話をしてくださる。 社のためというよりこの人のために、と思わせてしまう、ある意味人たらしなお方。 ───そんな彼が今回連れて来た、一人の男性。 その人に、とことん翻弄される日が来るなんて。
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