04.研修

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突然の講義の任務を終え、ホッとする。 皆良い子達で、助かった。 本部長が選抜しただけあって、さすが皆頭が良く回転が早い。 とてもやりやすかった。 無事終えられたのは、あの子達のおかげ。 しみじみ思いながら更衣室に向かう廊下を歩いていると、 「未結ちゃん!!!」 由良さんが、叫びながら向かって来た。 「ランチ!付き合いなさい? もう、ハレクラニでランチバケットとコーヒー買っておいたから! さぁ、今すぐ秘書室へ行くわよ?」 そのまま、強制連行。 ••• 「────さて。 洗いざらい、報告してもらいましょうか?」 「っ、」 えーと、もちろん。あのこと、ですよね……? 「れ、蓮さんが。 自分が言うから、私からは何も言わなくていい、と」 『俺しばらくみゆんちいるから』。 ん?どこかで聞いたようなフレーズ… 「たった!たった、この14文字よ?」 あちゃーー。やっぱり、そうなったかぁ…… 「これでも、私との会話文字数、最高記録だけどね? いいわ、再現してあげる。今朝の、私と久我さんの会話! 私『おはようございます』 久我 無言。ぺこっ、と頭は下げる。 久我『……一哉は?』←4文字 私『今日午前中は商談です。お昼は戻って来れるか、商談次第ですね。ちなみに午後も、別の商談です』 久我『じゃ伝えて』←6文字 久我『俺しばらくみゆんちいるから』←14文字。最高記録更新。 以上! この後は、何を聞いても、ウンともスンとも言わず! 無言でカタカタやり始めて、私のことは完全無視! 途中、こいつしつこいなぁ、みたいな視線を投げられただけ!」 キーーッと、悔しがる由良さん。 由良さんもある意味、蓮さんに馴染んで来たよね…?負けてないよ?? 「だ、か、ら、未結ちゃん?」 す、すごい気迫… 私は観念して、事の始終を話した。 だいぶ、ぼかしたけど。 だけど、由良さんにとって、同居の経緯はほとんど興味がなかったようだ。 「え、じゃあ、付き合ってるわけではないの?」 そこが知りたかったらしい。 「はい、あの、子犬と飼い主みたいな関係?で懐かれているだけで、男女の、そういう関係は、全くありません。」 だよね? あれは、スキンシップだもんね? 「へーーー。やっぱり、相当変わってるね?なんだぁ、つまんないの」 途端に興味を無くしたようだ。 「ははっ。まぁ、もし何かあれば、報告しますから。 あ、ところで由良さんは、犬、飼ったことあります?」 「あるよー。今も実家にいるよ? すんごい可愛いーーの。 私が帰ると、千切れるんじゃないかってくらい尻尾振って来てさぁ。 飛びついて来るんだよね。抱っこがだーいすきなの。 ベロベロ顔中舐められるのはちょっと困っちゃう時あるけど、可愛くって仕方ないんだよぉ」 嬉しそうに話す、由良さん。 そうだよね、やっぱりそんな感じなんだよね? ひとり納得し、ランチバケットを頬張った。
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