04.研修

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◇真野葉月side〜 ランゴリーノのランチは、絶品だった。 本部長も、とっても素敵な人だった。 彼女いるんですか?って聞いたら、いないけど、好きな人はいるんだって。 今、その人に猛アタック中らしい。 そんなことまで、気さくに話してくれちゃう本部長。 益々この会社が好きになった。 ランチを終えたところで、本部長が言う。 「この後、ハレクラニに行くんだと思うけど。 先に、俺の部屋に寄ってみて? 今、アプリ開発でアメリカから呼んでる凄腕の プログラマーがいてさ。 ま、それが本職ではないんだけど… ちょうど今、面白い作業してるところだから、覗いてって?きっと、勉強になると思うよ」 秘書の由良には伝えてあるから。あ、そこで見た内容はまだ企業秘密だよ? と悪戯っぽく笑い。 じゃあ俺はここで、と、足早に次の商談先へ向かって行く。 「ふぅん。ま、じゃあ、せっかくだから、見てく?」 皆に聞くと。 あんまり乗り気じゃなさそうで、でも本部長がせっかく言うのだから、と、とりあえず本部長室を目指す。 部屋の前で秘書の由良さんが待ってくれていた。 「皆さん、お疲れ様です。葵から、話は聞いています。今から室内にご案内します。 ……その、例のプログラマーですが。 相っ当の、変わり者です。 挨拶は、しなくて結構ですよ? コミュ障ハンパありませんので。 質問しても、返答はないものと思ってください。 この後15分間は、彼に見学の許可を渋々取ってありますので、その間はご自由に、作業を見ていただいて問題ないです。 興味がなければ、遠慮せずすぐに退室していただいて結構です」 にこっ。 所々、そのプログラマーへの棘を感じるのは、気のせいだろうか。 由良さんに続き、ゾロゾロと室内に入る。 一人の男性が、本部長のデスクで作業をしているのが見えた。 「…っ」 本部長とはまた別の種類の、壮絶イケメン。 ハーフ……クォーターかな? デスクトップPCを中央に、その横にノートPC、タブレットと、他にも私にはよくわからない電子機器を広げ、カタカタカタカタと、何やら没頭して作業している。 「さ、遠慮しないでどうぞ」 由良さんに促され、彼の周りにわらわらと近寄って行く。 一瞬彼が、うんざりした表情をしたのは気のせいか。 私達に構わず、作業を続けていく久我さん。 (と、言うらしい。由良さんに聞いた) うわぁ…画面がなんか、難しいプログラムの文字が羅列していて、凄い勢いで流れて行く。 これ、ちゃんと見えてるの? だとしたら、その動態視力ヤバすぎ。 そっち系オタクの井澤くんが、すげーー、すげーー!と叫んでいる。 私も凄いと思うけど、何がどう凄いのかはわからない。 「このアプリが商業化されたら、まじヤバいって!今開発段階だから、俺、頑張れば、このプロジェクトに携われるようになるかなぁ…っ!」 鼻の穴を広げて、めっちゃ興奮してる。 そんな彼をチラッと見やり、優しく微笑んだ…ように見えたのは気のせいか? だとしても、思わずドキッとしてしまった。 やはりその後、私達と久我さんが言葉を交わすことはなかった。 勇者の香山が何度も質問してたけど、完っ全スルーされてたし。 あ、「うるさい、黙れ」的な視線は一回送ってたかな? その後、興奮冷めやらぬ状態の井澤を、どうどう、となだめながら、cafeハレクラニに向かう。 「あ、いた。雛乃さん」 店頭で接客する、雛乃さんの姿を確認する。 カフェの制服に着替えて、とっても可愛らしい。 彼女目当てで来てるだろうなって男性が、ひとり、ふたり… 集客目当てで彼女が配属されているのは、間違いない。 彼女に挨拶し、それぞれ好みのコーヒーを買って、席についた。 しばらく、各々の作業に没頭し、レポートをまとめて行く。 数十分たった頃だろうか。 「おい、あれ」 松本が呟く。 ? 顔を上げると、久我さんがこちらにやって来るのが見えた。 「コーヒーでも買いに来たのかね?」 レジに近付いて行く、久我さん。 「コーヒー注文する時くらいは、喋んのかな?」 「いや。メニュー指差して終わりじゃね?」 と、香山。 うん、私も後者だと思う。 全員で、彼の行動を見つめる。 彼の視線の先。 それは──── !!!!! 雛乃さん。 雛乃さんは、まだ彼に気付いていない。 久我さんは彼女を目指し、スタスタと更にレジに近付く。 目が離せない。 え、このあとどうなるの?? 彼がレジにちょうど辿り着く頃、雛乃さんも彼に気が付いた。 「みゆ」 !!!!!!! 彼女の名前を愛おしげに呼び、くしゃっと見せたその表情に、5人全員がフリーズした。 ◇真野葉月side fin
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