月曜休みの過ごし方

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「てか、ユイトさんは気にしてるかもしんねーけど、オレ的には、ちっさい人の方が好きなんだよね」 お風呂から出て、2人で“ツマミ”の残りを食べていると、突然、カズマくんが言い出した。 何が、“てか”なのか、何と比べて、“の方”なのかは、よく分からない。返事のし方にも困ってしまう。 「そ、そう……」 「あ、ちげーよ? オレ年下ダメなの。ちっさくて、年上の、優しい人が好き。あと色白、黒髪」 片手に持ったフォークを、顔の高さでゆらゆらさせる。ボクの顔と頭を指したようにも見えた。 とりあえず、話を止めないように、質問を返す。 「……ふぅん、何で?」 「何でって?」 聞き返されて、さっそくミスしたのが分かった。あいづちひとつ返すのも難しい。 「好みに理由とかいる? それでコーフンすんだもん、しょーがねーじゃん」 カズマくんはそう言って、お皿に口をつけて、冷凍チャーハンの残りをかき込んだ。ラップに水滴がつくほど放置されて、べちゃべちゃになっているのに、イヤな顔ひとつせずに。 「ユイトさんだって何で男が好きか聞かれても困るっしょ」 この子と半日過ごして、分かったのは、ボク自身も偏見とか、そういう意識を持っているという事。 人を見た目で判断したり、根拠もなしにこうだと決めつけたり。自分がされてつらかった事なのに、それと同じ事を、誰かにしてしまっていた。 「そうだね……確かに」 「ユイトさんは? どんなヤツが好き?」 のどを詰まらせそうになった。 聞かれて嬉しいような、困るような。期待してきらきらした目で見られるのも、プレッシャーだ。 「えっと、あんまり、選べる立場じゃないから……」 「マジメかよ! 別に付き合いたいとかじゃなくてさ、オカズにしやすい系とかあんじゃん」 今までなら避けて来た話題だ。避けて、ごまかして、その場にいる人にあてはまらない人を探して。 でも、今は、正直に言うべきだと思った。
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