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第3話:妃選び(14)
「ハンナ、ジェジェットが言う通り、あの貴族の娘たちにはあまり手荒なことをしない方がいいわよ」
ジェジェットと別れ、自分たちの部屋の方へ戻りながら、ナターリヤはハンナに言った。
一見上品で高潔な様子なくせに、陰では非常に陰険なことをする。それが貴族というものであることを、国元でヴァレリアとオーブリー母子からさんざん陰湿な嫌がらせを受け続けてきたナターリヤは、身に沁みて理解しているのだった。
「わかった、わかった。心配ご無用!」ハンナは自分の胸を拳で叩いてみせた。その仕草は男らしく、同時に独特のかわいらしさがあり、ナターリヤは思わず微笑む。
「じゃあ、ハンナ。また明日ね」
自分の部屋の前でナターリヤは言った。ハンナの部屋は、廊下の更に奥の角部屋なのだ。
「ナターリヤ、ちょっと部屋に寄ってもいい?」ハンナがなぜか、ちょっと顔を赤らめ、モジモジした様子で言った。
「もちろん、いいけど」ナターリヤはドアを開けて、ハンナを招じ入れながら言った。「何かお話?」
「うん」ハンナは短く言って、こくっと頷く。
「じゃあ、お茶でも淹れる?」
「いいんだ。すぐ行くから。一言だけ言わせてほしい」
「何?急に改まって……」ナターリヤが小首を傾げた時、ハンナがいきなりナターリヤの手を握った。「ナターリヤ!」
「ハ、ハンナ……どうしたの?」ナターリヤは手を握られたまま、眼を大きく瞠った。
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