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第2話:首都の夜(4)
「エアリス……あのナターリヤについて、お前はどう思う……」
ポタッ。
「ナ、ナターリヤさま……クオ……クオニア公国の……公女……カ、カトリーナ第一公爵夫人の……一人娘でいらっしゃいま……」
ポタッ、ポタッ。
「……あぁっ」
「そんなことは知っている」
「も、申し訳……ありません!」
寝台の上に、下着姿のエアリスの身体が仰向けに横たえられている。
両腕は万歳の形に伸ばされ、手首のところで一つに縛られている。
先ほどまで頭の後ろに綺麗にまとめられていた髪が解かれ、寝台の上に広がっている様は、まるで人魚の髪が海中に広がっているような妖艶さだった。
偉丈夫は、ワイシャツのボタンをいくつか外しているために、たくましく、且つ彫刻のように滑らかな胸板が覗く。
寝台の脇に頬杖をつき、もう片方の手に吸い口の付いた小瓶を持っている。
小瓶は金の蒔絵の施された精緻なものだ。そこから、トロリとした液体を、エアリスの胸の谷間に垂らす。
「ああっ……も、もう……お、お許しください……ユージャーさま!」
手首や足首にまで届くクラシックなエプロンドレスを身につけている時は目立たないが、こうして下着だけになると、エアリスは見事なプロポーションだった。
切なげな声を洩らしながら上下する胸では、二つの白い丘が今にもブラジャーからこぼれんばかりに揺れる。
エアリスのブラジャーは黒いじみなデザインで、かわいらしい花柄の刺繍もレースもなかったが、そこがかえって大人の妖艶さを醸し出していた。
「西域から今日取り寄せた催情精油の効き目はどうだ?」
「わ……わかりませぬ……」
「わからぬ?そうか。では、もう少し垂らしてみるか」
「いや、やめて!」
エアリスは自分の身分も忘れ、思わず素で答えてしまう。
〝西域〟とは、異教徒の住む地域だ。中央からは〝匈奴〟の蔑称で呼ばれる彼らだが、スヤバード王国軍のような近代兵器を持たぬ代わり、彼らは龍を操る術を知っていた。彼らの戦闘力が決して侮れないのは、クオニア公国が彼らとの戦に敗れ、国力を大きく削がれる結果になったことからもわかる。
「信じる神が違うというだけで、この国の人間は西域の人々を野蛮な民族だと思っている。だが、本当にそうだろうか。彼らは独自の、優れた文化を持っている。これもその一つだ。どうだ、そう思わぬか」
「お、思います。ですから、もう……許してくださいませ……身体が熱くて……がまんできないんです」
「何ががまんできないんだ?」
「そ、それは……」
「はっきり口にしなければ、わからんぞ」
女のようなやさしげな風貌をしているくせに、ユージャーはなかなか意地が悪い。手の中の小瓶を興ありげに弄びつつ、また吸い口を胸の谷間に向かって傾ける。
「ひっ……だめっ……」
ほんの一滴なのに、エアリスは切なげに身悶えして悲鳴をあげる。
瓶に詰まっているのは、〝催情精油〟である。それはその匂いをかいだものを性的興奮状態にする、一種の秘薬であった。スヤバード王国でももちろん製造されているのだが、西域のそれとは、効果が比較にならないと言われていた。
龍を操る術が一種の秘法であるように、〝催情精油〟の製法も秘密とされていた。
今ユージャーが手にしているのは、西域の〝催情精油〟の中でもとりわけ強力なものらしく、ひとかぎしただけでエアリスは頭がくらくらし、まるでピンク色の雲に乗っているような気分になってしまった。
ユージャーは無情にも、〝催情精油〟の原液を直接、胸の谷間に垂らしてくるのだからたまらない。
まるで胸の上で炎が燃え盛っているような熱さなのだ。
しかも、その熱は淫靡な甘やかさを持っている。それが身体の芯をじんじんと痺れさせているのだ。
たったの一滴でも、それは燃え盛る業火に、太いまきをくべるのに等しい。
「あ、熱いっ……も、もうこれ以上は……おかしくなってしまいます!」
「そうか、少し垂らしすぎたか、では少し吸い取ってやろう」
ユージャーは自分の舌で、谷間に溜まっている油をそっと吸った。
「ああっ……」
エアリスは白い喉をのけぞらせて、身悶える。
「答えよ。お前は、ナターリヤという娘をどう見たのだ?私の知りたい答えを言うまでも、仕置きは終わらんぞ」
ユージャーは舌の先をとがらすと、ブラジャーで締めつけられているエアリスの白い双丘の谷間に、ぐっと刺し込んできた。
「そ、そんなことをされては……だ、だめっ……!」
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