第一話 私を起こして

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 夜伽者とはつまり、高貴な身分の人間の慰み者として生きるだけの存在だ。役人の監視の下、自分の家族と二度と会うこともなく、国から定められた住居で一生を過ごさなければならない。結婚することも、子を産むこともできない、悲しき存在だ。夢を持つことはできても、叶えることはできない。  十五かそこらの年齢で選ばれた夜伽者とて、永遠に若くはいられない。年を取ったり、皇子に飽きられたりすれば、その立場を失う。用なしとみなされた者は殺されてしまうといううわさだ。ひとり減ったとしても、国はまた新たな夜伽者を補充するだけ。まるで人間として扱われない。
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