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「命令を拒めば、家族のうちのひとりが絞首刑だぞ」
「桐杏が夜伽者にならずに済むのなら、よろこんで私が死のう」
阿村は役人の前に出た。
「お父さん!」
桐杏は叫ぶ。
「……まあ、聞け。私はなにも快楽殺人者ではない。むしろ、むだな血を流したり、命を奪うのは好ましくないと思っている。なにが言いたいかというと、身代わりとなるのはやめておけ。それはきっとむだ死にとなるだけだ。お前が死んだところで、数年後に妹の方を迎えに来るだけだぞ」
璃社はこれがただならぬ事態だと本能で気づいたのだろう。体をぶるぶると震わせている。
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