第一話 私を起こして

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「ただし、条件があります。この家族から夜伽者となるのは私だけで、妹はこの先も絶対にそうさせないでください。いえ、今後このフルハ島からだれひとりとして夜伽者は出さないでください」 「いいだろう。では、出発だ」 「出発の前に、荷物をまとめさせてください」 「そんなものはいらない」  役人は一蹴する。桐杏はそれは困った、と思った。家族をいつでも思い出せるような品を持っていきたかったからだ。そうなると、今身につけている着物しかない。これは桐杏が十三歳の誕生日に、君火がこつこつ貯めた銭で買ってくれたものである。 「じゃあ、最後に島の人たちに別れを告げさせてください」  役人は桐杏のその要求をのんだ。桐杏は武器を隠し持っていないか、簡易な身体検査をさせられる。役人に歯向かう気などないのに疑われてしまうことは、彼女を悲しい気持ちとさせた。
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