第一話 私を起こして

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「みんなにも家族がいるでしょう。ここは私より自分の家族のことを考えた行動を取って」  桐杏がそう説得すると、訓出たち島民は全員はっとし、鎮まる。桐杏を助けたいけれど助けられないという、断腸の思いを感じた。 「女、行くぞ」  別れの挨拶もままならないまま、桐杏は役人たちに舟で連れていかれる。 「待ってくれ。桐杏は島の宝なんだ。私の命を差し出すから、その娘だけは連れて行かないでくれ」  判大狗が後ろからよたよたと追いかけてきた。それまで遠い場所にいたのか、彼は今になってここへ来たようだ。 「老人、うるさいぞ!」  役人はそんな判大狗をムチで叩いた。 「うっ!」  判大狗はその場に倒れる。 「判大狗さん!」  桐杏は叫ぶ。年寄りの体にはどれほど痛かっただろうか、と。その痛みを想像するだけで、桐杏の目からは涙があふれる。自分が夜伽者に選ばれたことより、だれかが自分のために傷つく方が、桐杏には堪えがたかった。
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