第二話 あなたが私を作る

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 桐杏を乗せた馬車がバロンに到着するまで、五日はかかった。その間、桐杏は寝食していたものの、長旅で心身は疲れ弱っている。同じ体勢が続いて、足腰に痛みもあった。  馬車からおろされた桐杏は、敷地内の小屋に入らされる。ここは皇族の住む屋敷から、半径二キロメートルほど離れているらしい。夜伽者は都まで駆り出されても、皇族と同じ屋敷に住むわけではなかった。身分の低い者がそうするのはまずないとされている。 「今日からここがお前の家だ」  桐杏は小屋の中に入れられた。その家は平屋で、実家より少し広いくらいだろう。必要最低限の物しか置いてなく、さみしい造りとなっている。桐杏としては、おんぼろですきま風が入ろうとも、家族と暮らす家の方がずっとよかった。
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