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「寧丸さまに失礼のないよう、体はつねに清潔にしておけよ」
小太りの役人は冷たくそう言い放って、立ち去る。彼のひと言で、これから自分の体をもてあそぶであろう皇子の名を知った。
桐杏はこの五日でいちども入浴していない。正確には、一回も風呂に入らされていなかった。黒くて長い髪はべたべたとしている。桐杏はさっそく浴室で全身を洗う。役人に言われなかったとしても、すぐにそうしていたに違いない。気持ちの問題だった。
食事は一日三食、時間どおりに運ばれてくるとのこと。逃げようとしたり、反乱を起こしたり、敷地内にいる人間を攻撃すれば、その場で処刑されるらしい。また、自ら命を絶てば、罰としてその家族が殺される。女である夜伽者はここでの生活を受け入れておとなしく過ごす傾向にあるが、過去にここから脱出しようと役人に傷を負わせて、殺された者はひとりだけいるとのこと。
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