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夜伽者という名でも、日中は縫製など、簡単な作業を家でさせられるらしい。皇子の夜の相手をさせるだけでなく、りっぱな労働力としても利用するようだ。読書や伝統的な遊びだけでは時間をもて余すと感じる桐杏には、好都合だった。いくら曲作りがしたくとも、膨大な時間を曲作りにすべてあてるのというのも、むずかしい。だれかに聴いてもらえる機会もないということが、その意欲をそぐ。
桐杏が第三ということは、寧丸専属の夜伽者は他にふたり以上いることになる。いざこざを避けるため、夜伽者どうしが会うことはない。桐杏は自分以外の夜伽者は今頃どうしているのかと考える。似た境遇の人間と同じ思いを共有できたら、まだ救いとなるのに、と。
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