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 店を出て、砂浜に出ようとするが、立ち入り禁止の看板とロープのために近寄ることができなかった。しかし、トキは満足そうにスマホで写真を撮る。  冬が近づき太陽光が傾く。  空はホリゾンブルーに染められ、濃い青の海との境界が朧げに見える。  砂浜の薄橙色やコンクリートの人工物らしい灰色は、ホリゾンブルーを殺さない分空と海の壮大さを保ってくれる。 「海風、やっぱり寒い」 「アスア、ちょっとこっち向いて」 「はあ? 私を撮るのか?」 「思い出作り。駄目か?」 「全くよ、私は優しいから許可する。大好きなアスア様を撮るがいい。ポーズも少しくらいやってやる。寒いから早めにな」 「じゃあ、髪を耳にかけて、うなじが見えるように斜めの角度で、あとスカートのポケットに手を突っ込んでもらって、」  指示が細かくも止まらないトキに、 「いっぱい出てくるなよ、気持ち悪いだろうがあああ! そして残念なお知らせだ、ほとんどのスカートにはポケットがない。だから簡単なものにしろ」  とアスアが不満を爆発しているとシャッター音が鳴った。  アスアがトキのスマホを見ると、自分が意外と満足そうな顔をしていることに気づく。  このやり取りが楽しいのか? 「良いものが取れた。帰ろう」 「嫌だ」 「アスア?」 「寒いのは苦手だ、心細くて辛くなる。冬なんて来てほしくないし、秋の海なんて冬を感じさせる寒さだし。でも空も海も綺麗で、人も少ない。だから来て良かったと思う。トキなら寒いところにも取り敢えず行くかとはなった」  アスアはトキに寄って、その胸に支えてもらう。 「海も空も青すぎるだろうが。寒いし、でも力をもらった。そうだよ、私はチームで浮いて、それでバレー部をやめた。クラスでも少しずつ浮き始めた。私こういう性格だから、寒いノリに付き合うには無理なんだよ」 「知っている」 「でも一人になると寂しくなる。休日もずっと家から出る予定がなくて、炬燵で液体のように溶けるしかない。好きとか言うなよ、馬鹿。トキの馬鹿」  アスアはトキの胸から顔を話す。  涙と鼻水でぐちゃぐちゃだった。 「トキが来てくれるときが唯一の楽しみだった。関係が変わっちゃうだろ、どうするんだ。私だってトキが好きだ。でもいつまでも好きでいられるか? 永遠に愛せるか? 無理だったら、私は、一人になっちゃうんだぞ」  アスアは言いすぎたと思ってトキを見る。 「一人にならない。海と空の青みたいに、恋人と幼馴染の境界はあっても意外と分かりにくいものだと思うんだ」  アスアはホリゾンブルーと濃い青を見てみる。  トキはアスアの背中を撫でて、水平線を指差す。 「水平線だって永遠に見えたら永遠だ。頼ってくれるならいつまでも支える。俺と付き合ってくれ」  トキははっきりとまっすぐな目で言う。 「え、はあ、告白はしないんじゃ?」 「したくなった。守りたくなった」 「はあ? もう分かったよ。でも関係が変わっちゃうな」  アスアは残念そうに言う。 「なら友達が良かったか?」  トキは心配そうな顔で言う。  なんか、かわいい。アスアはそう思って。  かかとを上げて、ぐっと背伸びをする。  トキの唇に自身の唇を合わせる。  身体が熱い、寒さを忘れるくらいに。 「友達じゃない方向で」  アスアが頬を赤らめて言う。  二人は恋人になった。  関係は変わってしまったが問題ない。  二人の絆は続いていくのだ。
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