元カレと再会

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「あの、菜々ちゃんから聞いて心配してくださったんですね。 すみません、わざわざ……」 「…………あ、いや……。 ひょっとして元カレが現れたのか? クズ男って……」 「はい。彼、ここの担当になったらしいです。この10月から」 「イシハラのMRだそうだな。だったらレーザーか……。 俺が担当を替えるように言ってやろうか」 「いえっ! 本当に大丈夫です。 永真先生まですみません」 「までって……」 「さっきの莉久く……大迫先生も、実家に言ってくれるって言うものだから。 さすがにそんな私的なことで圧力をかけるなんて、ありえませんよ。 私は大丈夫です。また会っても無視しますから」 「だが」 「あの……すみません。実は本当に急いでいて。この後大事な会議があるんです」  お昼ご飯は諦めるにしても、さすがに時間が経ちすぎている。  心配は有難いけど、今は立ち話をする時間もないのだ。 「わかった。また何かあったら言ってくれ」 「ありがとうございます。 あ、一昨日もありがとうございました。 みんな今朝もまだUSパークのこと言ってましたよ。 楽しかったみたいで」 「そうか……。また連れて行ってやらないとな。 サッカーの練習もあるし」 「……はい」 『最高じゃん!』と言った菜々ちゃんの言葉を思い出した。  こうやって話していると、本当に私たちが付き合っているかのような錯覚をしてしまう。  でも、さっき突然莉久くんに詰め寄られて付き合っているとを認めたのは、偽装関係中だから。  そんなことはわかってる。わかっているんだけど、だからと言って「俺のものだ」なんて言うのはやめてほしい。  ドキドキして、期待、してしまうじゃない――。  ◇ ◇ ◇
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