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プロローグ
朝から降り出した雨は一定のリズムでアスファルトを打ち付けている。時刻は午後10時。陽はすっかり落ちきり、山の合間から控えめに街を見守っていた。
市街地の高級レストランから背広の群れが出てくる。そばに停めた黒塗りの車まで両脇に立って道を作る。その上を最後に店から出てきた大柄の男が闊歩する。
「あっ!」
車のそばで物音がした。護衛たちが一瞬でその方向を振り向く。
それは一人の少女だった。転んだそばには黒い傘と松葉杖が散乱する。決して弱くない雨粒が少女に浴びせられる。
「大丈夫かい?」
大柄の男は少女に優しい口調で声をかける。
「・・・ありがとうございます、クリス内務大臣」
「その怪我、事故か」
「はい。車が歩道に乗り上げてきて・・・そのままどこかへ行ってしまいました」
「なんてひどい話だ。警察に調べさせよう」
クリスは少女に右手を差し出した。
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