英雄を育てたジジイ

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畑仕事は早めに終わった。別にジジイの言う通りにしたわけではなく、単に仕事が早く終わったのだ。 「おっとお!帰る前に少し虫取りをしていってもいいか?」 弥太郎は虫取りが好きだったので、おっとおにそうお願いしてみる。 「ああ、いいぞ。俺は先に帰っているから。でも早く帰るんだぞ」 そう言って、おっとおは先に帰っていった。 弥太郎はさっそく目をつけていた草むらに入っていく。 かなり大物がいたはずだ。持って帰って弟達を驚かせてやろう。弥太郎はウキウキしていた。 虫取りは大成功だった。巨大な鈴虫や、ヒグラシなんかも捕れた。 しかし……。 「しまった。遅くなったかも」 ほんのり暗くなった道を見て、弥太郎は焦りだした。あまり遅くなると、おっとおに怒られる。 弥太郎は帰り道を急いだ。 見慣れた道を走っていると、何やら嫌な空気を感じた。 誰かに追われているような。でも振り向いても誰もいない。 弥太郎が再度前を向いて走ろうとしたその時だった。 「わあぁぁぁ!!」 目の前に現れた、巨大な人影に、弥太郎は腰を抜かした。 大人の2倍はあろうかという巨体、頭には大きな牛のような角、そして赤い肌と、口には牙が生えいる。 鬼!?鬼だ!! 弥太郎は、一瞬でそう思った。小さい頃に見せてもらった御伽草子の絵、あれに描かれていた鬼そのままだった。 鬼って本当にいたのかよ!! 鬼は座り込んでしまっている弥太郎に近づき、その小さな首を掴んだ。 「ふん、小僧か。獲物としては小さいな」 「は、離せ……!!」 怖い!怖い!苦しい!弥太郎はジタバタするが、鬼の力には敵わなかった。 「随分と元気な獲物だな。すぐにおとなしくさせてやろう」 鬼はそう呟いて、弥太郎に向かってその大きな爪を向けた、その時だった。 弥太郎と鬼の間に、何か白いものが飛び込んできた。
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