家族の勘違いと自分の気持ち

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「今日はわざわざ車を出してもらってありがとうございました。それから……ずいぶんうるさくしてすみませんでした。あんなに喜ぶ母と妹を見るの、初めてです」 「うるさくなんてないよ。こちらこそ、詩穂ちゃんの素敵なご家族に会えて、しかもお土産までいただいて、本当に良い時間を過ごさせてもらった。和菓子屋を営んでおられるなんてすごくうらやましいよ」 「そんな。桐生グループからしたら、うちの和菓子屋なんて小規模過ぎて見えないくらいです」 「とんでもない。とても綺麗で立派な店構えだった。君は優しいご家族に囲まれて育ったんだな。きっといただいた和菓子はとびきり美味しいんだろう。あとで食べるのが楽しみだ」 こんなにも私の家族を大事にしてくれる男性は初めてだ。 御曹司として何不自由なく育ってきたのに、あのマンションに引っ越してきたことを考えても、やはりこの人の感覚は「普通」を求めている。 今日は、それが手に取るように感じられた。
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