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男同士でしばらく踊っていると、今日何度目かの子供の泣き声を耳にした。うちの高校の文化祭に子連れで来る人は結構多い。
闇の中、目を凝らすと、幼稚園児くらいの男の子が校庭の隅でポツンと立っている。俺は列を外れてその子の元へと向かった。
「どうしたの? ママとパパは?」
しゃがんで声をかけた俺に、男の子は視線を向けてビクッとする。
そうだった。俺は今メイド服を着ている・・・。でも、こんな小さな子になんて説明したら良い?
「えっと・・・これはね・・・」
「わかってるよ、ボク!」
男の子は泣き止むと真面目な顔で言う。
「タヨウセイだよね!」
・・・俺は小さな人間だ。何か胸がモヤっとする。
「君、エライね! このお姉さんも嬉しいってさ。ねえ、西野さん?」
声の方を見ると、俺の隣に雪平さんがいた。
「・・・そ、そうね。ところで、君、お名前は?」
俺はその子の名前や年齢を聞くと、抱き上げて本部のテントへと連れて行った。
すると、生徒会の生徒が商店街のテントの方へと走る。すぐに母親らしい人が飛んで来て、俺と雪平さんに何度も頭を下げて男の子を引き取った。
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