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「あ、ゆずる、」
――話題は、いつの間にか、恋愛の話へと変遷していた。
「くるみちゃんのことは、今も、好き……?」
これは、夏目による駆け引きなのかもしれないと、ゆずるは、何となくで勘づいた。
夏目は、高校における修学旅行、船の上で、こう言っていたか『もし、くるみちゃんとの恋が成就しなかったら、わたしのところに来てほしいな』と。
それに対する答えを求められているような気がした。
いや、「水族館への誘いに乗る」というこの状況がある時点で、既に答えとされているのだろうか……
真意は、彼女自身にしか分かりえない。
「……」
ゆずるは、沈黙した。しかし、頭で深く考え込んでいる。七瀬と夏目と、両方にとって最も良い答えは、ないものかと。
しかしながら、そういった都合のいい答えが、おそらく見つからないであろうことも、重々承知であった。
「……正直に言うと、今も、気になってる」
ゆずるは、いったん恥を忘れ、言葉を小さい声で搾り出した。
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