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さて、夏目はどこかと、ゆずるは周囲をきょろきょろとしてみる。しかし、見当たらない。分かりやすい目印である灯台を模した像の前か、それとも、購買の前か……いずれにも、夏目の姿を確認することができなかった。
メールで『今駅に着いた、どこいる?』と聞いてみると、『西口看板の下』と、夏目からの素早い返信があった。
言われた通り、西口の縦看板の方向に振り向くと、そこには、確かに夏目の姿があった。
「よ」
夏目……?らしき人は、手をぴょこっと挙げた。
「な、ハルカ……?おはよう……」
また「夏目」と苗字で呼びかけて、慌てて声を引っ込めた。そういえば、彼女とは名前で呼び合う約束を交わしていた。
目を疑った。この人が、果たして本当に、夏目なのかと。
「真っ黒」という印象が強い、おしゃれなファッションだった。黒髪は長く、ツインテールの形に結ばっている。黒いマスクで口元を隠していて、クマみたいな厚い黒シャドウが、瞼に描かれていた。黒基調の薄手のTシャツと灰色のミニスカート、黒のニーソックスに黒の厚底のブーツ……とにかく、暗色系の色の塊で「真っ黒」だった。
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