第44話 ブラックシーネットルの奢り

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「そういえば、バイトのほうはどう?最近、調子悪いって言ってたから……」 「先々週から、行ってない……」  痛いところを突かれたゆずるは、ハンバーグを食べるフォークを置いて、夏目に聞こえない小さい声で「うっ……」とえずいた。  バイト先の監督から『指折るぞ』と脅迫された日を境に、すべてが崩壊していたことを思い出してしまって、胸が、縄で縛り付けられるようなきゅっとした痛みを訴えた。  大学の夏季補習に行くことすら恐ろしくなって、人とかかわることが苦痛に感じて、絵を描くことも、CGを作ったり、ゲームをするためにパソコンを開くことも億劫になってしまって、寝たきりの生活にまで、「転落」していたのだ。  元の活力ある生活に戻りたい、絵を描きたい、そう思っても、体が動かなくなってしまった。 「親に、病院連れていかれたんだよ。したら、鬱だって診断受けた」 「ああ、本物のうつ病になっちゃったんだ」 「でも、今日のために生活習慣、頑張って直したんだよ。今は、気持ちも落ち着いてる」
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