第44話 ブラックシーネットルの奢り

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 夏目と水族館に行くと約束したのだからと、自分の体に鞭打って起き上がったゆずる。今日という日までには、頬にできていたニキビも小さく薄くなって、ほぼ見えなくなっていた。  これも、早寝早起き、栄養が整った食事、軽い運動の習慣が功を成したと、ゆずるは一週間を振り返った。  そんな、診断書の書面上は「病人」なゆずるに対して、夏目は申し訳なさそうに、眉尻をちょっと下げた。 「ごめん、無理させてない?」 「いいや、全然そんなことないし、むしろ、元気になれたから、ありがたいよ。こうやって外出すると、気持ちも晴れるしね」 「それなら、よかった」  ゆずるの言葉に安心させられたようで、夏目は、またエビを尻尾までぱくりと食べた。  彼の様態を(おもんばか)ってか、夏目は、彼を鬱にさせた原因に、言及しなかった。 「お薬とか、もらってる?」 「セロトニンがなんとか、かんとかっていう薬を、処方してもらってる」 「わたしも飲んだことあるよ」 「え、そうなの……?」
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