7人が本棚に入れています
本棚に追加
まさか、こんな身近な人に、似たような境遇に遭った人がいたとは……ゆずるは、言葉を奪われてしまって、しかし、静かに聞く耳を傾けていた。
――なんだか、夏目との距離が、ぐっと、近くなったような気がする。それは、物理的な距離でなくて、精神的な面での「キョリ」だ。
すると、夏目の語りの雰囲気ががらっと変わって、唐突に「鬱あるある」と言い出した。
「ベッドから起き上がれない、風呂に入れなくなって髪がベタベタになる、急に涙が流れる……」
ゆずるは、夏目が羅列したそれに、大いに共感した。
「……分かる。なんか、風呂にしばらく入ってないと、髪、めっちゃ抜けない?」
「お風呂に入らないことが、抜け毛の原因にはならないらしいけどね。たぶん、おんなじ場所にずっと横になってるから、抜けた髪が多く見えるってことだと思う」
何やら、調べてみたことがありそうな感じに、夏目は力説した。「なるほど」と相槌を打ちながら、ゆずるは共感の大波に飲まれていた。
「ベッドから起き上がれなくなるのは、やっぱり、ハルカも一緒?」
果たして、この症状は共通なのかと、今一度、確かめてみたくなった。
最初のコメントを投稿しよう!