第44話 ブラックシーネットルの奢り

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 七瀬が、来栖に対しては、あまり積極的でないというのは、分かった。ただ、そこで思考が停止して、ぽかんとしていたところを、夏目に言葉でもって突かれた。 「いや、そんな、まさか……」 「気になるんなら、会って聞いてみれば?またとないチャンスだよ。『俺のこと、好きだったりしますか?』って、聞きなよ。たぶん……わたしの感覚から言わせると、くるみちゃん、【落ちる】よ」  ゆずるの心は、大きく揺れ動いていた。 ――明日に、命を絶つという決意が、夏目の進言を前に、揺らいでいた。  もしかすれば、七瀬と会うことができれば、何か、希望の光を見いだせるかもしれないという、おぼろげな希望が、湧いて出ていた。  もしかすれば、七瀬とまた、仲良くなれるかもしれない。好きだと、言ってくれるかもしれないと思うと、希死念慮という死神の鎌を持つ手が、震えているのを知る。  七瀬と会うか、否か……  そうやって、迷いの森を彷徨(さまよ)うように、また思い悩みながら、あっという間に、水族館の外へと出ていたのだった。
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