7人が本棚に入れています
本棚に追加
七瀬が、来栖に対しては、あまり積極的でないというのは、分かった。ただ、そこで思考が停止して、ぽかんとしていたところを、夏目に言葉でもって突かれた。
「いや、そんな、まさか……」
「気になるんなら、会って聞いてみれば?またとないチャンスだよ。『俺のこと、好きだったりしますか?』って、聞きなよ。たぶん……わたしの感覚から言わせると、くるみちゃん、【落ちる】よ」
ゆずるの心は、大きく揺れ動いていた。
――明日に、命を絶つという決意が、夏目の進言を前に、揺らいでいた。
もしかすれば、七瀬と会うことができれば、何か、希望の光を見いだせるかもしれないという、おぼろげな希望が、湧いて出ていた。
もしかすれば、七瀬とまた、仲良くなれるかもしれない。好きだと、言ってくれるかもしれないと思うと、希死念慮という死神の鎌を持つ手が、震えているのを知る。
七瀬と会うか、否か……
そうやって、迷いの森を彷徨うように、また思い悩みながら、あっという間に、水族館の外へと出ていたのだった。
最初のコメントを投稿しよう!