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第1話 俺をいじめた、クラスで一番かわいいヤツ
ほんの些細なことが、人生の分岐点になってしまうことがある。
「おーい、ゆずる!」
小学4年生の時に、それは起った。
クラスメイトのうちの一人、唐松が俺、【加賀美佑弦】を名前で呼んだことが始まりである。
彼は、「一緒に帰ろうぜ」と言って、駆け寄ってきた。
唐松は、クラスでも有名ないじめっ子だったので、極力関わりたくなかった。無言のまま、聞こえないフリをしてランドセルを背負って、自席を立った。
「待てよ」と、唐松は肩を軽く叩いてきた。急に呼ばれて、さらに肩を叩かれたものだから、体がビクっと震えた。
「何だよ……?」
俺は、面白くない人間なんだから、他の人と帰ればいいじゃないかと思って、ぶっきらぼうな感じに返事をした。
唐松は、振り向こうともしないゆずるの前に躍り出て、顔を覗き込んできた。
「今、無視しようとしたよな?なんでだよ?」
「いや……そ……」
「そうじゃない」というただ一言が、喉に詰まって出てこなかった。
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